時を重ねても
愛され続けるものを目指して
デザイナーの視点
細かな修正を繰り返しながら、長い月日をかけ完成まで辿り着いた60周年記念のボストンバッグとアタッシェケース。
今回は、職人と連携しながらサンプル制作に取り組んだデザイナーに、60周年プロダクトに込めた想いを尋ねました。
そこには、どのようなこだわりが詰まっているのか?
周年プロダクトの制作背景をぜひお楽しみください。
― ソメスサドルにとって節目となる60周年プロダクトに、ボストンバッグ・アタッシェケースを選んだ理由を教えてください。
以前特別モデルで発表した55周年の時とは違った切り口でアイテムをセレクトしたいと思い、今のソメスにないラインナップで一体何が良いかと言う点から視野を広げていきました。
ソメスの技術を活かした作り甲斐のあるもの。また、あまり手がけたことがない分、いつも以上に悩みながら時間をかけて作り上げることで達成感を得られるものを考えた時、真っ先に浮かんだものがアタッシェケースと口枠式のボストンバッグでした。
― デザイン設計する上で、ソメスサドルらしい“エッセンス”をどのように落とし込みましたか?
最高の素材を用いているので、素材を生かすためにも過度な装飾は必要ないと考えました。とはいえ、表に見えない部分、作りの部分での妥協はしていません。見えない部分も丁寧に作るこだわりや、馬具製作で培った確かな技術で仕立てるしっかりとした強度面がお客様に支持されてきました。ものづくりの確かさがあるからこそ、ソメスらしさが反映され、末長くお使いいただけると自信を持っておすすめできる商品を生み出せると思っています。
デザイン面ではステッチやコバ、佇まいなど、職人さんたちの技術がより引き立つように、足し算引き算を繰り返しながら仕上げていきました。記念モデルなので、色々装飾を詰め込みたくなりがちなのですが、削ぎ落とすことで浮かび上がってくる美しさを大事にし、最終的にこのような形に仕上がりました。
また、今回のアイテムは内装を赤で統一しています。60周年記念ということで「還暦」というワードが出てきたのですが、赤いものを身につけることで魔除けや厄除けにもなりますし、今年度は会社として「原点回帰」をモットーにしていて、暦の上で60年で人生一回りし生まれた年に戻るといわれることからも、新たに歩み始めるという意味に相応しいと思い赤を採用しました。そんな遊び心も織り交ぜているので、いつもと違った雰囲気を味わっていただけるのではと思います。
― 実際にサンプルが上がってくる中で、イメージとの相違や苦労した事はありますか?
大きくイメージが違うという点は正直言ってありませんでした。
イメージしたものにとても近いものを仕立て上げてくれるので、うちの職人さんたちの技術は本当に最高レベルだと毎回感心しています。
しかし、サンプルで色々試してもらい、組み上げていく中で思いがけない問題点が見つかったり、形にしてみて気づく点は多く、現場では何度も微調整を繰り返して苦戦したと思います。実際に作り上げたら気になるところがどんどん浮上してきて、正直予定よりもサンプル作成数は多くなりました。これはどの商品でも当てはまることですが、実際サンプルを作っていく工程で気づくことは多々あります。想像していなかったことが起こりますし、問題や新たな発見もあります。記念モデルとしてふさわしいか?と現場でも話し合いを繰り返し、妥協しなかったのがサンプルの本数に表れました。ただ着地点はしっかり定めていたので、改善点も明確で迷子にならず進行できたと思います。
― 完成したプロダクトに対する想いや、これから手にするお客様に向けてメッセージをお願いします。
今回のモデルは、先輩方の築き上げてきた技術を次の世代に受け継ぎ、ソメスの技術を次世代に繋げていく、という意味合いも込めてお届けする記念モデルです。
今回のアイテムたちは、毎日使うものとは少しかけ離れているかもしれません。
街中の店頭でもあまり見なくなったアイテムですし、旅行や通勤時にはもっと使い勝手の良いアイテムがあると思います。
でも敢えてこの鞄たちを持つことで、背筋がピンと伸びるような、いつもとは違う特別感を感じてもらえるような視点でお求めいただけたら、とても嬉しいです。
ソメスの技術を詰め込んだ、末長くお使いいただけるものとして、自信を持ってお届けします。これら記念モデルを通して、ソメスのモノづくりへの熱意を感じてもらえたら本望です。