ソメスのダレス物語 vol.1

ソメスの景観をつくる
美的感覚が育てたダレスバッグ

ソメスと共に歩んだ、25年物のダレスバッグ

2023年の冬、
砂川ショールームで長らく陳列していた、展示品のダレスバッグを差し替えました。

今のソメスの定番には無い、ブラウン色にほんのりと型押しが伺える本体革。
それは現在の「エグゼクティブ ダレスバッグ」の原型であり、歌志内での創業当時からソメスサドルブランドを築き上げた現相談役 染谷純一が、25年愛用したものでした。

革製品は使い込んでこそ味が出るもの。
長く愛用されたバッグには、使い方のクセはもちろんのこと、使い手の人柄さえも滲んで現れます。

染谷は類まれなる美的感覚の持ち主。
例えばファクトリーの芝や窓から見える木のバランス、屋内外一つ一つのライティング、ショールームの奥に展示している鞄の状態まで、砂川ファクトリーの景観の隅々に気を配る眼力は、創業間もない時代から今もなお衰えることはありません。

その目で育て上げたダレスは、25年モノとは思えないほど型崩れが無く、一方で25年分の愛情を惜しみなく革に染み込ませた、文句なしに美しいバッグでした。

底から口枠に向かってカーブを描く胴のフォルム、蛇腹のように波打つ横顔の美しさ、口枠の開け心地…。
数多のパーツで繊細なディテールを形作りながら、ひとつのダレスバッグとして組み上げる。

そのすべては職人の感覚と手腕に委ねられます。

「経年変化したダレスバッグをお客様にご紹介するなら、美しいものをお見せするのが筋。」

という染谷の言葉には、年数を重ねても美しさを保つダレスに生き続ける、職人の技と想いをお見せする。そんな言葉にも聞こえます。

ソメスのダレスバッグの継承者
「ダレスは一言では語れない」

25年使い込んだダレスバッグ、その実物を手がけたのがベテラン職人の小野寺です。

その当時ハード系革を用いてその腕を大いに振るった製造の中心的人物であり、ソメスのダレスバッグ継承者の一人です。

今は裁断をメインに、日々革に向き合う小野寺は、ダレスを手に当時をこう語ります。

「相談役(染谷)がダレスを使う間は手入れも行った。この革(メテオール)は手入れをしてその良さがさらに引き立つ良さがある。当時は今と比べると、質の良い革が沢山あったよ…。」

「見本とするサンプル、製造の手順があったとしても、その時その時の革の種類、状態…様々な要因で異なる部分があるから手の掛け方も違う。」

ソメスサドルに、そしてダレスバッグに携わって四半世紀以上。

大ベテランでもある小野寺に、ダレスの美しさを維持するために必要なことを伺うと
「一言では言えないし、1日取材されても語りつくせない。」と言います。

“使い手が大事に使って革を育てる。”
ダレスバッグ本来の美しさは、単に使い手に委ねられるほど単純ではありません。

卓越した職人の目と技術があってこそ成るダレスバッグはある意味、職人の腕を魅せる「芸術品」と言えるのかもしれせん。

ソメスのダレスバッグ

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